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CBRNE災害とは?日本も他人事ではないその脅威

JOURNAL

2025.08.29

CBRNE災害とは?日本も他人事ではないその脅威

―見えない危機に備える、新時代の防災とは―

「CBRNE災害」とは何か?

私たちは日頃、地震や台風といった自然災害への備えを意識することが多い一方で、ある種の“見えない災害”への意識はまだ高いとは言えません。その代表が「CBRNE災害」と呼ばれる一群の複合災害です。

CBRNEとは、以下の5つの災害カテゴリーの頭文字を取った言葉です

C(Chemical):化学物質災害(有毒ガスや薬品の漏洩・散布)
B(Biological):生物災害(感染症、細菌兵器など)
R(Radiological):放射性物質災害(放射性同位体の拡散など)
N(Nuclear):核災害(原発事故や核兵器の使用)
E(Explosive):爆発災害(爆弾やIEDによる爆発被害)

これらの災害は、自然由来のものもありますが、事故やテロ、戦争によって意図的に発生するリスクもあります。発生すれば極めて深刻な被害をもたらすことから、近年、防災や国土安全保障の分野で注目されています。



日本で実際に起きたCBRNE関連の災害・事件

CBRNE災害は決して海外だけの問題ではありません。日本でもこれまでに、いくつかの深刻な事例が発生しています。これらの出来事は、単なる“もしも”ではなく、現実の問題として対策が必要であることを私たちに教えています。

地下鉄サリン事件(1995年)

東京の地下鉄で起きたオウム真理教によるテロ事件では、猛毒の神経ガス「サリン」が通勤時間帯の地下鉄車両内で散布され、13人が死亡、6000人以上が負傷する大惨事となりました。これは、民間社会における化学兵器の使用という、世界的にも極めて稀なケースであり、都市生活がCBRNE災害に脆弱であることを露呈しました。

福島第一原発事故(2011年)

東日本大震災に伴い発生した津波によって、福島第一原子力発電所が重大な損壊を受け、大量の放射性物質が大気中・海中に放出されました。これはR(放射線)およびN(核)の両要素を含むCBRNE災害であり、住民の長期避難、農業・漁業への風評被害、除染作業の長期化など、多大な社会的コストを伴っています。

COVID-19パンデミック(2020年〜)

新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックは、B(生物災害)の深刻な例です。感染症という形で社会全体に広がり、人々の生活様式を一変させ、医療・経済活動・人の流れにまで甚大な影響を及ぼしました。病原体がCBRNEの一要素であることを改めて認識させられた事例でもあります。



テロ・戦争という「新たなリスク」

CBRNE災害のリスクは、今後さらに多様化・高度化していくと考えられています。近年では、国家間の緊張に加えて、国家以外の武装集団による非対称戦争やテロも頻発しており、こうした背景からCBRNE兵器が使われる可能性も無視できません。
2025年現在、ロシアとウクライナの戦争は依然として続いており、核施設への攻撃や化学兵器の使用に関する懸念が国際社会で何度も浮上しています。こうした戦争の“越境的リスク”は、欧州に限らずグローバルな安全保障問題となっています。
さらに、イスラエルと中東地域における武力衝突も激化しており、ガザ地区を含む都市部での戦闘が常態化するなか、CBRNE関連の攻撃やインフラ破壊が現実的な懸念事項となっています。
そして東アジアでは、台湾有事の可能性が高まり続けています。万が一、中国との軍事衝突が発生した場合、日本への直接的な影響は避けられません。自衛隊・在日米軍基地の存在からも、日本が戦域の一部となる可能性すらあります。
こうした地政学的な現実を前に、CBRNE災害は想定外ではなく、起こり得る現実の脅威として備えなければならないフェーズに来ています。特に都市密集地やインフラ、イベント会場などが潜在的ターゲットになり得る中で、日常的な防護体制の整備と、緊急時の対応能力が強く求められています。



CBRNE災害に対する備え

CBRNE災害は、「空気」を通じて人に被害を与えるケースが多くあります。有毒なガス、生物由来のエアロゾル、放射性粒子、粉塵などは、空気中を漂い、吸引されることで体内に取り込まれてしまいます。
このため、CBRNE災害における防護対策では、「空間内の空気をいかに制御し、清浄に保つか」が極めて重要なポイントになります。個人用マスクや防護服といった対策に加え、空調・換気という設備面からのアプローチが欠かせません。



プロテクトアーツのCBRNE対応換気装置

こうした背景を踏まえ、プロテクトアーツではCBRNE災害への対応を想定した換気装置の開発・販売をしています。
この装置は、空気中の化学物質、ウイルス・菌、放射性粒子などを高性能フィルターで除去し、屋内空間の空気を保護するために設計されたものです。多層式フィルター構造、耐薬品性能、陽圧保持機能などを備え、CBRNE災害時にも屋内に安全な空気環境を確保することができます。避難所や医療施設、行政機関、公共インフラ施設への設置が期待されています。


目に見えない脅威に、確かな備えを

CBRNE災害は、私たちのすぐそばに潜む“静かなる脅威”です。その影響は広範で深刻、かつ発生時には迅速な対応が難しいという性質があります。
だからこそ、私たちは今、空気の安全性という新しい視点での備えを考える必要があります。呼吸を守ることは命を守ること。プロテクトアーツの技術は、その実現を支える重要な選択肢のひとつです。
CBRNEの時代において、被害を最小限に抑えるためには、何よりも「事前の準備」と「空間設計への意識」が不可欠です。
その第一歩は、正しい知識を持ち、必要な対策を選び取ることから始まります。