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What is the penetration rate of shelters in Japan? Why is it less than in other countries in the world?

JOURNAL

2026.02.16

What is the penetration rate of shelters in Japan? Why is it less than in other countries in the world?

近年、国際情勢の変化や自然災害の増加により、シェルターへの関心が高まっています。しかし、日本におけるシェルターの普及状況は、世界の主要国と比べてどのような位置にあるのでしょうか。本記事では、日本と世界のシェルター普及率を比較しながら、その背景や今後の展望について解説します。

日本のシェルター普及状況

一般家庭でのシェルター設置の実態

日本における一般家庭での核シェルターや本格的な防災シェルターの設置例は、まだ多くはないのが現状です。個人向けのシェルター市場は存在するものの、設置費用が数百万円から数千万円に及ぶこともあり、一般家庭にとっては大きな投資となります。そのため、新築住宅の建設時や大規模なリフォームの際に検討される程度で、既存住宅への後付け設置はさらにハードルが高いのが実情です。

ただし、近年は国際情勢の変化や自然災害への備えの必要性が広く認識されるようになり、個人からの問い合わせや相談は徐々に増加傾向にありますシェルター設置を真剣に検討する家庭も少しずつ増えてきており、市場は確実に成長の兆しを見せています。

インターネット上では日本のシェルター普及率を「0.02%」とする情報が散見されますが、この数字の出典は明確ではなく、実際のところ正確な統計データは存在していません。

公共施設や自治体の取り組み

一方、公共施設においては、地下鉄の駅や地下街、公共の地下駐車場などが緊急時の避難場所として指定されているケースがあります。また、一部の自治体では、有事の際に住民が避難できる施設のリストを公開していますが、これらは必ずしも本格的なシェルターとしての機能を備えているわけではありません。

東京都などの大都市圏では、地下施設の活用が進められていますが、核攻撃や化学兵器といった特殊な脅威に対応できる施設は限定的です。防災の観点からは、地震や台風などの自然災害に対応した避難所の整備が優先されてきた経緯があります。

世界各国のシェルター普及率との比較

スイス・イスラエル:高い普及率を実現している国々

世界に目を向けると、シェルター大国として知られるスイスでは、法律によって新築建物へのシェルター設置が義務付けられており、人口に対するシェルター収容能力はほぼ100%に達していますスイスでは中立国としての立場を維持しつつ、国民の安全を最優先する政策が長年続けられてきました。

イスラエルも同様に、地政学的な緊張関係から、すべての新築住宅や公共施設にシェルターの設置が法律で義務付けられています。マンションやアパートには共用シェルターが、一戸建てには個別のシェルタールームが標準装備されており、国民のシェルターに対する意識も非常に高い状況です。

こうした徹底した法整備と国民保護の姿勢から、スイスとイスラエルはシェルター先進国と呼ばれ、世界各国のモデルケースとなっています。

韓国・シンガポール・ノルウェーなど主要国の状況

韓国では、北朝鮮との関係から民間防衛の一環として地下鉄駅や地下商店街などがシェルター機能を持つよう設計されており、都市部を中心に高い収容能力を確保しています。また、定期的な避難訓練も実施され、国民の防災意識の維持に努めています。

シンガポールでは、1998年以降に建設されたすべての新築住宅に防空壕の設置が義務付けられており、普段は倉庫などとして活用されています。ノルウェーやフィンランドなどの北欧諸国も、冷戦時代からの伝統として公共施設や住宅におけるシェルター整備を継続しており、高い普及率を維持しています。

日本との違いはどこにあるのか

これらの国々と日本の最大の違いは、シェルター設置を法律で義務付けているか否かという点です。また、地政学的な脅威に対する認識の違いも大きく影響しています。スイスやイスラエル、韓国などは、常に潜在的な脅威と隣り合わせの状況にあり、国家レベルでの防衛意識が高い一方、日本は島国という地理的条件もあり、直接的な脅威を感じる機会が相対的に少なかったといえます。

日本で普及が進まない背景

島国という地理的要因と安全保障意識

日本が島国であるという地理的特性は、歴史的に外敵の侵入が少なかったという背景につながっています。このため、陸続きで他国と国境を接する国々と比べて、国民レベルでの安全保障に対する危機意識が相対的に低い傾向にあります。

また、戦後の平和主義的な価値観のもと、軍事的な脅威よりも経済発展や社会福祉に重点が置かれてきたことも、シェルター整備が優先課題とならなかった要因の一つです。近年は北朝鮮のミサイル問題など新たな脅威も認識されるようになりましたが、具体的な対策としてのシェルター整備には至っていません。

法整備や行政支援の課題

日本には、スイスやイスラエルのようなシェルター設置を義務付ける法律が存在しませんまた、シェルター設置に対する補助金制度や税制優遇措置も整備されていないため、個人や企業が自主的に設置するインセンティブが乏しい状況です。

自治体レベルでも、シェルター整備よりも地震や台風などの自然災害対策が優先されており、予算配分においてもシェルター関連の項目は後回しになりがちです。国民保護法に基づく避難施設の指定は進められていますが、本格的なシェルター機能を持つ施設の整備は限定的です。

近年のシェルター需要の変化

国際情勢の緊迫化による関心の高まり

2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、日本国内でもシェルターへの関心を大きく高めるきっかけとなりました。それまで「遠い国の出来事」と感じられていた戦争が現実のものとして報道される中、「日本でも同様の事態が起こり得るのではないか」という不安が広がったのです。

さらに、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験の頻発も、国民の危機意識を高める要因となっています。Jアラートが発令されるたびに、「ミサイルが飛んできたらどこに逃げればいいのか」「自宅に安全な場所はあるのか」といった具体的な疑問を持つ人が増えています。

こうした国際情勢の変化を受けて、シェルター関連企業への問い合わせは急増しているといわれています。特に、これまでシェルターに関心を持たなかった一般家庭からの相談が増えており、中には具体的な設置を検討する動きも出てきています。メディアでもシェルター関連の報道が増え、一般市民の間で「もしもの時」への備えについて真剣に考える機会が増えてきました。SNSなどでもシェルターに関する情報交換が活発化しており、防災意識の高い層を中心に、核シェルターや防災シェルターの設置を具体的に検討し始める人も出てきています。

これからのシェルター普及に向けて

補助金制度や税制優遇の可能性

シェルター普及を促進するためには、行政による支援が不可欠です。具体的には、シェルター設置に対する補助金制度の創設や、固定資産税の減免措置、住宅ローン減税の対象拡大などが考えられます。

すでに一部の自治体では、”耐震”シェルターの設置に対する補助金制度を導入しているところもありますこうした取り組みを核シェルターや複合型シェルターにも拡大していくことで、個人の負担を軽減し、普及を後押しすることができるでしょう。

Particularly,台湾有事への懸念が高まる沖縄県の南西諸島地域では、国や県による財政支援を含めたシェルター整備の議論が進んでおり、こうした地域から先行的に補助金制度が導入される可能性もあります。

集合住宅や公共施設への設置推進

個人住宅へのシェルター設置が難しい場合でも、マンションなどの集合住宅に共用シェルターを設置することで、多くの人々をカバーすることが可能です。新築マンションの建設時にシェルター機能を持つ共用スペースを設けることを奨励する制度や、既存マンションの大規模修繕時にシェルター化を進める支援策などが有効でしょう。

また、公共施設や商業施設の地下空間をシェルターとして活用する取り組みも重要です。地下鉄駅や地下街、公共の地下駐車場などを、有事の際には避難所として機能するよう設計・改修していくことで、都市部における収容能力を大幅に向上させることができます。

実際に、地下空間のシェルター化に取り組む企業も現れており、既存の地下施設を改修してシェルター機能を付加するソリューションや、新規の地下開発においてシェルター仕様を標準化するプロジェクトなどが進められています。こうした民間企業の技術やノウハウを活用しながら、官民連携でシェルター整備を推進していくことが期待されます。

まとめ

日本のシェルター普及率は、スイスやイスラエルなどのシェルター先進国と比較すると著しく低い水準にあります。その背景には、島国という地理的要因、高額な建設コスト、法整備の遅れなど、さまざまな要因が存在します。

しかし、近年の国際情勢の変化により、シェルターへの関心は確実に高まっています。今後、補助金制度の整備や公共施設でのシェルター化推進、民間企業による地下空間活用など、官民が連携した取り組みが進むことで、日本のシェルター普及率も徐々に向上していく可能性があります。

完全なシェルター社会の実現には長い時間がかかるかもしれませんが、まずは個人レベルでできる備えから始め、同時に社会全体でシェルター整備の必要性について議論を深めていくことが重要です。