―”空気を止めない”という備えの本質―

災害時、最も重視すべきは「空気の確保」

災害対策として多くの方が水や食料の備蓄に注目する一方で、実は最も急を要するのが「空気の確保」だということです。特に2011年の東日本大震災では、倒壊した建物内で発生した粉塵や、津波後の泥水乾燥による微細粒子が呼吸器系疾患を引き起こした事例が数多く報告されました。
密閉型シェルターの内部では、実測データによると4人家族の場合、約3時間で二酸化炭素濃度が5,000ppmを超え、頭痛や集中力低下などの症状が現れ始めます。適切な換気なしでは、この密閉空間が命の危険となるのです。
そして換気装置の心臓部とも言えるのが電源システムです。2018年の北海道胆振東部地震では道内全域が停電（ブラックアウト）し、復旧までに最大3日を要した地域もありました。この教訓から、プロテクトアーツの『ATバリア』は停電にも対応した換気システムとして設計されています。

シェルターの実用性—核だけではない多様な脅威

実は、「核」よりも国内の自然災害に対する備えとしてシェルターという選択肢があります。
例えば、2000年の三宅島噴火では、火山灰に含まれる二酸化硫黄ガスによる健康被害が深刻化し、島民全員が4年半もの長期避難を強いられました。また、2022年の福島県沖地震では、建物損壊に伴うアスベスト飛散のリスクも指摘されています。
ATバリアに搭載されているNBCフィルターは、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集できます。実験では火山灰や花粉はもちろん、PM2.5などの微小粒子状物質もほぼ完全に除去できることを確認しています。フィルター性能維持のための定期点検も、専門の技術者が実施する体制を整えています。

電源が途絶えても換気を止めない：現場で証明された二重の備え

「1つのバックアップでは足りない」という考えのもと、ATバリアの電源バックアップシステムは、以下の2段階で構成されています。

1. バッテリーバックアップ

ATバリアは、電力が遮断されたとしてもバッテリーを使用した断続運転が可能です。また、現場のニーズから生まれたのが、マキタ製18Vバッテリー対応です。建設・工事現場で広く使われているこのバッテリーは、複数本を順次交換すれば長時間のバックアップが実現します。

2. 手回し発電機による人力運転

バッテリー運転とあわせて、手回し運転も導入しています。手回し発電機により、電源がない環境下でも一定の送風量の確保が可能です。シェルター内の人員で交代することで、長時間の運転体制も十分に実現可能です。

多重電源設計が生む「継続性という安全」

ATバリアの電源システムは、多重構成を採用しています

・通常時：商用電源（単相100V/200V対応）
・一次バックアップ：マキタ製スライド式18Vバッテリー
・二次バックアップ：手回し発電

緊急時、人の判断力は著しく低下します。その中で冷静な判断をするための「安全な空間と時間」を確保することの重要性は計り知れません。ATバリアは単なる装置ではなく、次の行動への「踏み出す力」を支える基盤だと考えています。

最後に：空気こそが、最初に必要な備え

防災の専門家として痛感するのは、「目に見えないものほど重要」ということです。水や食料は1週間分の備蓄が推奨されますが、実は空気は数分で生死を分けます。ATバリアが提供するのは、単なる「機械」ではなく、「呼吸できる時間」です。その時間が命を守り、次の一歩を踏み出す力となります。
「空気を止めない」—その一点に徹した設計思想が、災害大国・日本で生まれた換気システムの真価なのです。